ダイヤモンドには「天然ダイヤモンド」と「人工ダイヤモンド」があり、どちらも価値が認められ、市場に出回っています。とはいえ「人工で生成した宝石って、ほんとに値打ちがあるの?」や「見分け方がわからずに偽物を掴まされるか不安」といった声も耳にします。
そこで本記事では、天然ダイヤモンドと人工ダイヤモンドの特徴や見分け方、価格の違いについて解説します。また、人工ダイヤモンドによく似た宝石類についても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
天然ダイヤモンドと人工ダイヤモンドの違い
まずは、天然ダイヤモンドと人工ダイヤモンド、それぞれの特徴について見ていきましょう。とくに人工ダイヤモンドは、一般的な「人工で生成した安物のイメージ」という見方が変わるかもしれません。
天然ダイヤモンドとは?
天然ダイヤモンドとは、地球内部の高温・高圧下で数十億年という長い時間をかけて生成される鉱物です。宝石業界で用いられる硬さの基準「モース硬度」において、ダイヤモンドはもっとも硬い10であり、他の物質で傷つけることが困難なため、装飾品や工業等研磨剤として広く使われています。
自然なまま採掘されるため、透明度や輝き、色のバリエーションが一つひとつが独特で、産地によっても品質や特性が異なります。
人工ダイヤモンドとは?
人工ダイヤモンドとは、その名のとおり人工的に生成されたダイヤモンドで、「ラボグロウンダイヤモンド」や「合成ダイヤモンド」とも呼ばれます。
「人工だから安い素材やコストで作られたもの」と思われがちですが、高温高圧法や化学気相成長法といった技術が使用され、結晶構造や透明度、輝きといった特性は、天然ダイヤモンドと相違ないことが、化学的にも証明されています。
天然ダイヤモンドと同様に、工業用から装飾用まで幅広く用いられ、品質の高い人工ダイヤモンドは、宝石市場でも人気があります。また、人工的に製造プロセスを制御できるため、色のついたダイヤモンドなどバリエーションも豊富です。
どちらでもない「キュービックジルコニア」と「モアサナイト」
ダイヤモンドによく似た人工宝石はほかにもあります。代表例として、「キュービックジルコニア」と「モアサナイト」を紹介しましょう。
【キュービックジルコニア】
キュービックジルコニアとは、セラミックの材料として用いられる、二酸化ジルコニウムに、酸化カルシウムや酸化マグネシウムを混ぜて生成した人工鉱石です。外観や物理的特徴がダイヤモンドによく似ているため、装飾用としてもよく使われます。
モース硬度は8〜8.5とダイヤモンドには及ばないものの、色付きなどのバリエーションも豊富で価格も安価なため、一定の需要があります。
【モアサナイト】4>
モアサナイトとは、隕石の衝突跡から発見された鉱物を再現して作られた人工鉱石です。炭素化ケイ素の結晶であり、地球外で初めて発見された鉱物だとされています。
ダイヤモンドに近い光学的特性で、光の屈折率や分散度も高いため、強い輝きを持っています。硬さも9.2〜9.5と抜群の耐久力ですが、人工的に生成されたダイヤモンドとはまったく別の鉱物なため、天然ダイヤモンドと比べると安価です。
天然ダイヤモンドと人工ダイヤモンドの見分け方
人工ダイヤモンドはとても精巧にできているため、プロの鑑定士でも見分けが難しいとされています。一般消費者では見分けることは困難ですが、ここからは、天然ダイヤモンドと人工ダイヤモンドに焦点を絞って、それぞれの特徴をより具体的に見ていきましょう。
見た目
天然ダイヤモンドと人工ダイヤモンドの違いを見た目だけで判断するのはとても難しいですが、専門家が用いる機器で判別可能です。天然ダイヤモンドは内部にわずかながら内包物があり、光の反射もより自然です。
人工ダイヤモンドは外側も内側も完全にクリアで、研磨することで強く輝いています。
結晶型
地球内部で長い年月をかけて生成された天然ダイヤモンドと、数週間で生成される人工ダイヤモンドでは、結晶が形成されるまでのプロセスが大きくことなるため、その違いから判断できます。
天然ダイヤモンドの結晶は八面体(三角形が8つ組み合わさった状態)であるのに対し、人工ダイヤモンドは八面体に、正方形が6つ組み合わさった立方体の結晶が見られます。
品質
ダイヤモンドの品質基準として有名な「4C」ですが、人工ダイヤモンドも天然ダイヤモンドと近い品質を持つため、4Cで違いを判断するのは難しいとされています。
しかしながら、天然ダイヤモンドの唯一性により、カットの仕上げや内包物、色など個体ごとに特有の個性が見られます。採掘された原石の産地や質によって個体差があるため、その後のカットや磨きといった加工によっても品質が左右されますが、人工ダイヤモンドは均一で一貫した品質をもっているのが違いです。
価格
人工ダイヤモンドは天然ダイヤモンドと同じ化学的構造を持っている優れた人工鉱物ですが、「唯一性」や「希少性」、「文化的・歴史的価値」といった観点から、天然ダイヤモンドよりも安価です。
目安として、人工ダイヤモンドは天然ダイヤモンドの30〜60%程度の価格とされています。
人工ダイヤモンドも評価されている
天然ダイヤモンドが持つ「唯一性」や「希少性」、「文化的・歴史的価値」はとても魅力的ですが、人工ダイヤモンドも市場で評価されています。
たとえば人工ダイヤモンドは、環境や人権といった問題の解決が期待されています。天然ダイヤモンドは採掘の過程で環境に大きな負担をかけるだけでなく、紛争地域での採掘や児童労働、低賃金労働といった問題を抱えています。
人工ダイヤモンドは人の手で生成・管理されているため、取引において、優れたトレーサビリティと透明性を持っています。かたちや大きさ、色などの選択肢も天然ダイヤモンドに比べると自由度が高く、一般的な宝飾用としての要件を備えているのが、人工ダイヤモンドです。
天然と人工はどちらがおすすめ?
どちらも魅力的な天然ダイヤモンドと人工ダイヤモンドですが、それぞれ「どんなとき」「どんな人にとって」おすすめなのかをまとめました。
ダイヤモンドを購入するときの参考にしてみてください。
天然ダイヤモンドがおすすめな人
天然ダイヤモンドのもっとも大きな魅力は、長い年月をかけて自然の力で生成された鉱石であることです。希少価値が高く、限られた数量しか存在しないことがわかっているため、資産としても認められています。
また、古代から神秘的なエネルギーを持つと信じられており、持った人の意志や想いを増幅させる力を持ったパワーストーンとして親しまれてきました。
結婚式などの特別な贈り物など、鉱石的な価値と歴史や伝統といった価値観に魅力を感じる人は、ぜひ天然ダイヤモンドを検討してみましょう。
人工ダイヤモンドがおすすめな人
生成技術も向上し、市場でも注目度が年々高まっている人工ダイヤモンドは、優れたコストパーフォーマンスと安定した品質が魅力です。デザインの幅も広く、大きさや色、カット仕上げなどの自由度が高いため、自分だけのオリジナルデザインを求める人にもおすすめといえます。
人や環境に優しい「エシカル商品」であることも、ここ数年で注目されているポイントです。
特徴を把握し納得のいく取引をしよう
天然ダイヤモンドと人工ダイヤモンドの違いについて、解説しました。ダイヤモンドが持つ高い価値は天然だからこそかもしれませんが、近年では、人工ダイヤモンドもその価値が認められてきています。
人工とはいえ、安いものではありません。それぞれの特徴を知り、納得のいく買い物や取引をすることが大切です。
本記事を参考に、ぜひ検討してみてくださいね!