5月の誕生石でも知られる、美しい緑色をした宝石エメラルド。宝石の中でも非常に知名度が高く、性別年齢を問わず人気の貴石ですね。今回は、エメラルドを使ったジュエリーを売りたいと考えている人必見の、買取価格の査定方法やエメラルドについてご紹介します。
エメラルドの基礎知識
ダイヤモンド、ルビー、サファイアと並び、世界4大宝石のひとつであるエメラルド。古くは、古代エジプトのクレオパトラも愛した宝石。旧約聖書にも記されるほどのエメラルドが、長い年月をかけてどれだけ人々の心を魅了してきたかがうかがえます。
エメラルドの名前の由来は、『緑色の貴石』を意味するサンスクリット語の「スマラカタ」から。それがギリシャ語、ラテン語、古代フランス語と言語を変えて変化し続け、最終的に「エメラルド」になったと言われています。
鉱物としてのエメラルド
鉱物としてはベリル(緑注石・りょくちゅうせき)に分類されるエメラルド。日本では、翠玉(すいぎょく)または緑玉(りょくぎょく)という和名で知られています。ベリルを構成する成分の違いで色に変化が起こり、淡い水色のアクアマリンやピンク色のモルガナイトなど様々な種類の貴石になります。
無色透明のベリルに酸化クロムが着色することによって、緑色のエメラルドが生まれます。
エメラルドのインクルージョン
「傷のないエメラルドを得ることは、欠点のない人間を見つけるより難しい」と言われるほどに、エメラルドはインクルージョンと呼ばれる内包物が多い鉱物。これはエメラルドの色を作るクロムなどが入り込んだときのもので、この内包物がエメラルドが割れやすくなっている原因を作っています。
エメラルドのインクルージョンは、専門家たちには「ジーブル(霧氷)」と呼ばれ、それが集まったものが「ジャルダン」と呼ばれています。「ジャルダン」はフランス語で庭という意味を持ち、「エメラルドの中には庭がある」という風に表現されることがあります。
エメラルドの硬度と屈折率
エメラルドの硬度は7.5~8と貴石の中でも比較的硬い高度をもちながらも、結晶の持つ性質上、一定方向からの衝撃に弱く、割れやすく傷つきやすい特性を持ちます。そのため、超音波洗浄機での洗浄やお湯につけるのは厳禁。場合によっては透明度が落ちてしまうので注意が必要です。比重は2.72と割合に軽く、重さで他の緑色をした貴石と見分けることが可能です。
エメラルドの産地や種類について
確認されている最も古いエメラルドの産地は、紅海付近だとされています。現在エメラルドは6大陸から産出されていて、その中でも世界で流通しているエメラルドのなんと50%以上を占めているのがコロンビア産。コロンビア産のエメラルドを始め、各産出国で取れるエメラルドの違いをご紹介します。
コロンビア産
世界で最もエメラルドの産出量が多いコロンビア。量だけではなく質もとても高いものが多く産出されています。中でも「ムゾー鉱山」から採れるエメラルドは、超一級品と有名。深みのある柔らかな緑色が特徴のムゾー産エメラルドは、青みを帯びておらず、純粋な緑色で非常に美しいと人気があります。チボール鉱山のものは、インクルージョンが少なく高い透明度を誇り、少し青みがかっている緑色が魅力。コスケス鉱山から産出されるものは淡い緑色が最大の特徴です。
ザンビア産
コロンビア産のエメラルドに比べ、インクルージョンが少ないザンビア産のエメラルドは、均一的な緑色をしていることが特徴です。内包物が少ないので透明度の高いエメラルドが採れますが、内包物が少なすぎるがゆえに光の屈折も少ないために、コロンビア産のものよりも価値は低いとされています。六角形で採れるエメラルドの原石ですが、ザンビア産のエメラルドの原石は丸みを帯びたものが多く、オバールカットに適しているためエメラルドカットにされることはあまりありません。
ジンバブエ産
ジンバブエ産のエメラルドの一番の特徴は、輝石を多く含んだ片岩という形で採掘されることです。これはどういうことかと言うと、原石が小さいということ。小さいけれども高品質のエメラルドが採れる、と有名です。エメラルドの色は濃く深い緑色で、かすかに黄味を帯びたその色は、他の産地では見られない特徴的な色をしていて大変人気があります。ジンバブエで産出されたエメラルドは粒が小さいために、そのほとんどがラウンドカットがスクエアカットに加工され、石の一辺が3mm以下となっています。
ブラジル産
1970年代になってから、エメラルドの採掘が盛んになったブラジル。エメラルドの鉱山は多く見つかりましたが、鉱石が枯渇するのも早く、今では多くの鉱山が閉山しています。
ブラジル産のエメラルドの特徴は、比較的インクルージョンが多く、様々な色を持つこと。ブラジル産のエメラルドは、純粋な緑色から濃い青緑まで、産出される石の色が均一でないのが一番の特徴です。
エメラルドの買取金額の決定方法(価値基準)
エメラルドの品質を評価する基準は、大きく分けて三つの項目からなります。
その三つとは、「カラー」「クラリティ・透明度」「テリ・輝き」です。その他の要素も含め、重要度順にみてみましょう。
カラー・色
エメラルドの価値を評価する上において、最も重要になるのがその色です。一番高く評価をされる色は、暗すぎない鮮やかな色調のもので、青みがかった緑色か純一な緑色です。黄色や青色などが強くなりすぎると、その色味の強さによって評価が下がります。中~濃い緑色がエメラルドとされるのに対して、薄い緑色は「グリーンベリル」に分類されるために、エメラルドとは区別されます。また色が均一で、色帯がないことも重要なポイントです。
クラリティ・透明度
ほとんどの宝石に言えることですが、より内包物・インクルージョンが少なく、より透明度の高い石が評価の高いものになります。ただし、一般的に非常によく見られるエメラルドのインクルージョンは、高品質のエメラルドに限り業界で容認されています。これは、ダイヤモンドが10倍に拡大して評価を下すのに対し、エメラルドが肉眼で評価をされることでもわかります。評価の際に、肉眼で目視できるようなインクルージョンがない場合は、『Flawless(傷なし)』という最高品質であるとの評価が下されます。
内包物の評価基準が低いとはいえ、そのインクルージョンが石の透明度やクラリティに大きなマイナスの影響を与えていると判断された場合には、当然のことながら石の価値は下がってしまいます。
テリ・輝き
テリとは業界用語で、輝きのことを表しています。
テリ・輝きは、どのようにカットされたかということが、評価を左右させる大変重要な役割を果たしています。エメラルドはカットによってその品質を大きく変化させる石と言って過言ではなく、カットがその石の潜在的価値を引き出す最大のポイントとなっています。
石の色つやを左右させるテリ。光が石に当たったときに、石内部の輝きと石表面の光沢感があればあるほど、美しいエメラルドになります。
エンハンスメント
インクルージョンが大変多いエメラルド。そのため、ほとんどの場合においてエンハンスメント処理が行われています。このエンハンスメント処理は、『含浸処理』といい、内包物の多い石に油や樹脂を染み込ませることを言います。この作業をすることによって、エメラルドの表面に達しているインクルージョンのでこぼこを目立たなくする効果があります。この処理はほとんどのエメラルドに施されていて、エンハンスメントをされていない「ノンエンハンスメント」エメラルドは、世界産出量の0.001%未満、10万個にひとつとされています。エンハンスメントは、処理が行われていたからといって、その宝石の価値を下げることはありません。
ただ、もしノンエンハンスメントの美しいエメラルドがあるとすれば、それは非常に希少で高価なものとなります。
エメラルドを高く売る4つの方法
意外に思われるかもしれませんが、エメラルドにはダイヤモンドのように確固たる審査基準がありません。そのために、買い取り業者によっては、損をしてしまう可能性があります。では損をしないためにどのようなことに気をつければいいのでしょうか。エメラルドを高く売るための4つの方法をご紹介します。
- 手入れを行う
- 複数の業者から見積もりをとる
- 宝飾品かリサイクル素材か
- 鑑別書の有無
1. 手入れを行う
宝飾品というものはとにかく見た目が大切ですから、査定をしてもらう前にしっかりとお手入れをしておきましょう。ただ、エメラルドは衝撃や熱に弱い性質を持っていますので、お手入れには注意が必要です。
超音波洗浄やお湯は避け、水洗いの際も、どうしても汚れが落ちない時だけあくまで自己責任で中性洗剤を溶かした水につけて軽く洗浄するにとどめましょう。水分と取る際は、柔らかな布を使い、ドライヤーを使うのは避けてください。
2. 複数の業者から見積もりをとる
きちんとした査定基準のないエメラルドは、業者ごとに買取価格は変わってきます。そのため、一つの業者ですぐに決めてしまわず、複数の業者から見積もりを取ってもらうことをお勧めします。大切な宝石を売るのですから、納得のいく価格で買い取ってもらいたいですね。
3. 宝飾品かリサイクル素材か
エメラルドを手放したいと思う方のほどんどが、何らかの加工をされたジュエリーとしてお持ちだと思います。ジュエリーの買取では、そのまま売り物として再販できるものとして査定されるか、リサイクル素材として査定されるかで、その価格は大きく変わってきます。
ブランドジュエリーの場合は再販される可能性が高く、そこにブランドの価値も加算されます。リサイクル素材として査定される場合には、エメラルドと金属、その他の小さな石(例えばダイヤモンドやジルコニアなど)と、別々にしたパーツごとに値段を計算します。
4. 鑑別書の有無
鑑別書があるとないとでは、買取業者の安心感が違います。鑑別所は、その石が天然のエメラルドであるという証明。それに加え、検査内容次第では産出国やエメラルドのグレードがわかります。
業界では、中央宝石研究所が信用のおける機関とされており、鑑別書がない場合で石をジュエリーから外してもいいのであれば、中央宝石研究所でソーティングメモを作成してもらうことをお勧めします。
ソーティング価格は石のカラットでそれぞれ違い、小さいものだと約1,000円、大きくなると約10,000円となります。