結婚式や記念日といった大切な場面で重宝され、幸せの象徴ともいえるダイヤモンドですが、そのすべてが正しさや美しさの上に成り立っているとは限りません。「紛争ダイヤモンド」と呼ばれる、武力紛争の資金源に利用されたダイヤモンドが、国際社会で問題視されています。
本記事では、紛争ダイヤモンドと、その解決策として設立された「キンバリープロセス」、そして、よりクリーンなダイヤモンドがどういったものなのかを解説します。
キンバリープロセスと紛争ダイヤモンド
紛争ダイヤモンドは、深刻な人権侵害をもたらす国際的な問題です。ここでは、まず紛争ダイヤモンドとキンバリープロセスがどういったものなのかを解説します。
キンバリープロセスとは?
キンバリープロセスとは、2003年に発足した、紛争ダイヤモンドの流通を阻止するための国際的な枠組みです。正式名称は「キンバリープロセス認証制度(Kimberley Process Certification Scheme: KPCS)」と言います。
国連、ダイヤモンド生産国、ダイヤモンド業界、NGOらが協力して設立した制度で、日本も参加しています。
紛争ダイヤモンドとキンバリープロセスの誕生
では、紛争ダイヤモンドとはいったいどのようなものなのでしょうか。紛争ダイヤモンドとは「ブラッドダイヤモンド」や「血塗られたダイヤモンド」とも呼ばれ、主にアフリカ諸国で、反政府組織などによって違法に採掘され、武器の購入や戦闘員の資金源として利用されているダイヤモンドです。
紛争ダイヤモンドが市場に出回ることで、紛争が長期化・激化し、多くの人々が犠牲になるだけでなく、人権侵害や児童労働、環境破壊などの深刻な問題を引き起こしています。
この問題を解決するために、国連はダイヤモンドの原産地を証明する制度を導入し、紛争ダイヤモンドの流通を抑制するための制度「キンバリープロセス」が生まれました。
キンバリープロセスの仕組みと認証制度
キンバリープロセスについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
キンバリープロセス認証制度
キンバリープロセスでは、ダイヤモンド原石の輸出入に際し、原産地証明書の添付を義務付けています。この証明書は、ダイヤモンドが紛争ダイヤモンドではないことを保証するものです。
原産地証明書
ダイヤモンドの原産地証明書は、ダイヤモンド原石に対して発行される書類です。ダイヤモンドが合法的に採掘され、紛争ダイヤモンドではないことを証明する以下のような内容が記載されています。
ダイヤモンドの原産地:どの国で採掘されたダイヤモンドなのか
採掘業者:ダイヤモンドを採掘した企業や個人の情報
輸出業者:ダイヤモンドを輸出する企業の情報
ダイヤモンドの重量:カラット単位で記載
発行日と発行機関
また、偽造防止のためのセキュリティ対策も施されており、シリアルナンバーや透かし、ホログラムといった技術に加え、偽造が困難な特殊な用紙も使われています。
参加国の義務と責任
キンバリープロセスに参加する国は、国内法を整備し、ダイヤモンドの輸出入を厳格に管理する義務と責任を負います。キンバリープロセス証明書の添付はもちろん、ダイヤモンド原石の輸出入を密封された容器にて行うこと、非参加国への輸出入を行わないことといった内容です。
よりクリーンなダイヤモンドを求めて
キンバリープロセスは、紛争ダイヤモンドの流通を抑制するうえで一定の成果を上げてきましたが、依然として課題も残されています。例えば、小規模な違法採掘や、人権侵害、環境破壊などの問題には対応しきれていないという指摘があります。
そのため、近年では、キンバリープロセスに加えて、より倫理的なダイヤモンドを求める動きが活発化しています。
トレーサビリティの向上
ダイヤモンドの採掘から研磨、流通までのすべての過程を追跡できる「トレーサビリティ」の向上が求められています。近年、ブロックチェーン技術などの登場によって、ダイヤモンドに関連するサプライチェーンの透明性を高める取り組みが進められています。
エシカルなダイヤモンド認証
キンバリープロセスよりも厳格な基準を設け、人権、労働環境、環境保護などに配慮したダイヤモンドを認証する制度が登場しています。
Responsible Jewellery Council(RJC)認証:宝飾業界における倫理的な行動規範を推進する国際的な非営利団体です。ダイヤモンドのサプライチェーン全体において、人権、労働基準、環境保護、倫理的なビジネス慣行などを遵守している企業に与えられます
Fairtrade Gold:小規模な金採掘業者を支援し、公正な価格と労働条件を保証する国際的な認証制度です。ダイヤモンドの採掘にも適用され、採掘労働者の生活向上や地域社会への貢献を促進しています
Diamond Development Initiative(DDI):ダイヤモンド採掘による地域社会への貢献を促進する非営利団体です。ダイヤモンドの原産地証明書に加え、採掘地域の開発や人材育成などの取り組みを評価し、認証を与えています
ラボグロウンダイヤモンド
ラボグロウンダイヤモンドとは、天然ダイヤモンドと同じ成分、硬度、輝きを持つ、人工的に作られたダイヤモンドです。倫理的にクリーンで環境負荷が少なく、天然資源の枯渇を心配する必要がないなど、多くのメリットを持つことから、近年注目を集めています。
クリーンなダイヤモンドを選ぶためにできること
紛争ダイヤモンドは、私たち一般消費者にとっても大いに関係ある問題です。買い手であっても売り手であっても、よりクリーンなダイヤモンドを選択していくためには、どのようなことに注意していけば良いのでしょうか。ここでは、いくつかのポイントを紹介します。
信頼できる専門店を選ぶ
ダイヤモンドの専門知識を持つ、信頼できる専門店を選びましょう。ダイヤモンドの品質だけでなく、エシカルな側面についても詳しいため、売却(買い取り)の際にも厳正な査定を行っています。
ダイヤモンドの認証情報を確認する
ダイヤモンドに付属する書類や、自分が購入した店舗のウェブサイトなどで、キンバリープロセス認証やその他のエシカル認証を取得しているかを確認してみましょう。
エシカルなダイヤモンドブランドを支持する
人権、労働環境、環境保護に配慮したダイヤモンドを販売しているブランドを支持することが大切です。近年では、販売店と同じく、ジュエリーブランドも、独自でエシカル認証を取得している企業が増えています。
問題意識を持ち積極的に情報収集しよう
ダイヤモンドの売買には、まだまだたくさんの問題が残っています。私たち一般の消費者も、他人事ではいられません。
もしお手持ちのダイヤモンドが、どういった経緯で今自分の手元にあるのか気になる方は、ぜひDDjapanにお問い合わせください。